秋の草花のソネット
うす紫の 野紺菊(のこんぎく)のささやきが
枯れゆく草のなかに ひそかにあふれ
わたしはひとり 夕映えのなかに立つ
もう戻らない あのなつかしい季節のために
枯れゆく草のなかに ひそかにあふれ
わたしはひとり 夕映えのなかに立つ
もう戻らない あのなつかしい季節のために
(おまへは 風にゆれる我吾(われもこう)よ
紅い涙を そつと大地にこぼしながら)
紅い涙を そつと大地にこぼしながら)
ちひさな竜胆(りんどう)の 青い鐘の音(ね)が
冷たい霧のなかに やさしくとけてゆき
かつてここに吹いてゐた あたたかな南風を
乾いたススキの穂は すつかり忘れてゐる
冷たい霧のなかに やさしくとけてゆき
かつてここに吹いてゐた あたたかな南風を
乾いたススキの穂は すつかり忘れてゐる
ただ ひとすじの秋の夜風が
色あせた野辺のすきまを 吹きぬけて
色あせた野辺のすきまを 吹きぬけて
わたしの胸に そつと残してゆくものは——
かすかに匂ふ ひとつのしづかな名前だ。
かすかに匂ふ ひとつのしづかな名前だ。