ひとつののちの歌(秋の黄昏に)
風が吹いてゐた、かすかな光のなかに
私たちはもう、言葉を失くして立つてゐた
とり落とした雲のきれはしのように
そらには淡い、葡萄色の影がにじみだす
私たちはもう、言葉を失くして立つてゐた
とり落とした雲のきれはしのように
そらには淡い、葡萄色の影がにじみだす
あんなにやさしかつた夏の日々は
どこへ行つてしまつたのだろう
誰もいないかわらの、かれ草のうえで
ひそかに鳴つてゐるのは、遠いオルゴール
どこへ行つてしまつたのだろう
誰もいないかわらの、かれ草のうえで
ひそかに鳴つてゐるのは、遠いオルゴール
あやふやな夕闇の、そのふかみに
忘れてきたものを、いまも探してゐる
きみのさしのべた、白い手のひら
忘れてきたものを、いまも探してゐる
きみのさしのべた、白い手のひら
それはもう、追いつけない夢のようだ
消えゆく光の、冷たいすきまに
ただ、秋の風が、ながれつづけてゐる
消えゆく光の、冷たいすきまに
ただ、秋の風が、ながれつづけてゐる