YUKIEのきまぐれ日和

YUKIE

 気まぐれに、その日の出来事や、感じたこととかを書いていくつもりです。
 あと、別のブログで公開していた小説もUPしています。よかったら読んでください。

もみじ~きみがくれたもの~(最終話)

自作小説

 大会当日、試合前に辺りを見回した。が、あの少女の姿は見えない。
「やっぱり、あの子はただの夢ってことか?」
 
気になったが、今は試合に集中しようと気持ちを切り替えた。
 
 結果、個人戦で明日香が優勝、団体戦で2位と言う結果で終わった。部員たちみんなで喜んだ。

 大会が終わってから再び少女をを探し回ったが、結局見つからなかった。

 あきらめて帰ろうとして会場を出たその時だった。
「おいっ、さっきそこで猫が車にひかれたらしいぞ!」
「ええ?マジかよ?」
(え!?いや、でも、まさかこんなところまで来るってことは・・・・・・。)
 
明日香は嫌な予感がし、その話をしていた人に声をかけた。
「あの、その猫ってどんな猫だかわかりますか?」
「え?ああ、何か話によると、白い地に茶色いブチ模様の猫だって」

(なっ!?)

「そ、その猫は!?今何処にいるの!?」
「え、ええっと、見つけた人が近くの動物病院に運んだって・・・・・・」 

 
明日香は急いで動物病院へ向かった。この辺りの動物病院は行きつけのところ1つしかないのですぐにわかった。
 病院に入るとすぐに獣医さんが出てきた。
「野村先生!」
「京極さん。今、連絡しようと思っていたところです」
「先生、運ばれた猫って、もみじじゃないですよねっ!?」

「残念だけど、もみじちゃんで間違いないよ」

「っ!?も、もみじは?」
「・・・・・・気の毒だけど・・・・・・」
「そ、そんな・・・・・・。うそだろう!?うそって言ってくれよ先生!」
「運ばれてきた時はすでに・・・・・・。学校の門の前で車にひかれて、ほぼ即死だったようで・・・・・」
 その言葉を聞いたとき、明日香の頭にあの言葉が浮かんできた。
(「あたし、応援に行くからね!」)
(まさか、まさかあの子は・・・・・・)
「い、いやーーーーーーーーーー!!!!」
 
明日香は周囲の目も気にせず、その場で泣き崩れた。

 もみじは、野村先生の紹介してくれた動物愛護霊園で供養してもらうことになった。


 家に帰ってから、一度は止まった涙が再び流れ出した。
「どうして、どうしてもっと早く気がつかなかったんだろう・・・・・・」
 明日香は一晩中泣き続け、やがて泣き疲れて眠りについた。

 
気がつくと、あの夢の白い空間にいた。目の前には、あの少女ががいる。
「お姉ちゃん・・・・・・」
「もみじ!!」
 
明日香はすぐに少女を抱きしめた。
「もみじ、もみじだったんだね!!ごめんね。今まで気付いてあげられなくて」
「ううん、あたしだって、今まで言わなかったもん・・・・・・」
 
もみじは少し元気なく言った。明日香は抱きしめていた腕を解いた。目は涙でいっぱいになっている。
 微笑んではいるが、もみじの目からも涙がこぼれている。
「お姉ちゃんごめんね。あたし、もうお姉ちゃんと同じ世界にはいられないの。お姉ちゃんもわかると思うけど、あたし死んじゃったから・・・・・・」

 明日香はもう何も言えなくなった。

「お姉ちゃんと会えなくなっちゃうのは寂しいけど、でも・・・・・・」
「でも?」
「離れていても、会えなくても、ずっとずっと友達だよ!」
「友達・・・・・・そう、うっ、だね・・・・・。私ともっ、みじは、ずっ、と友達だよね。あり、うっ、がとう・・・・・・。もみっ、じ・・・・・・」
 
嗚咽で言葉が途切れ途切れになった。
 もみじは涙を流しながらも、満面の笑みを浮かべた。
「お姉ちゃん、だーいすき!!」
 
もみじは明日香に抱きついてきた。
「もみじ!」
 明日香ももう一度抱きしめようとしたが、もみじは抱きついた瞬間に消えてしまった。 


 
それから数ヶ月経ち、明日香たち3年生は引退の時期を迎えた。
 今年剣道部は、始めて全国大会に進むことができた。明日香もいい記録を残して引退を迎えることができた。

 引退式の帰り、明日香はもみじと始めて会ったあの場所へ行った。ちょうど出会った日と同じように、紅葉の葉は真っ赤になっている。
「もみじ、私これからもがんばるよ。でも・・・・・・、やっぱり会いたい。会いたいよ、もみじ・・・・・・」
 
明日香は目の前に落ちてきた紅葉の葉を手に取った。その瞬間、もみじの声が頭の中で聞こえてきた。
「離れていても、会えなくても、ずっとずっと友達だよ!」