なるべく気楽に気楽に~!

紫音-sioto

精神的な疾患を持ってる私の気楽に気楽に生きたい願望です~!
ちょこちょこ愚痴も入りますが、嫌な思いをされる方がいたらすみません><

柔くしなやかな月の下で

自作小説

第二十一章

十二月も終盤になり、彼とは何処へも出掛けないクリスマスを過ごし、仕事も一年の終わりを迎えそうな時期になっていた。
溝口はなんだか楽しそうな日々を送っている様子で、毎日の様に、にこにこしている。
「上河!今日で仕事納めだね!」十七時を廻り、周りの人達は「良いお年を」と毎年聞くであろう言葉を残し「お疲れ様でした」と帰って行く。
年末は私も十七時には帰宅する様にしていた。上司からも「上河君は十七時に上がる様に」と釘を刺されていた事もあったのだが、有難い言葉でもあった。
ロッカーへと向かう足取りに溝口も一緒になって歩ていた。
「年末どうするの?」と聞く溝口に対し、私は「特に変わらなく過ごすよ」と彼の存在を話そうとは何故か思えなかった。
「そっかぁ、上河はお酒飲まないもんね!」と笑いながら私を見上げる。
「ふふ…そうだね」と私も釣られて笑ってしまう。
ロッカーへと着き、お互いのロッカーから冬物のコートを羽織り、話し掛け続ける溝口に私は笑って居た。溝口は白いコートを羽織っていた。「可愛い」と思う様な格好の溝口とは相反して私は黒いコートを羽織っていた。
「煙草吸ってく?」と溝口に誘われたが、「今日は真っ直ぐ帰ろうかな」とにこやかに返す。
「そっか!それじゃあまた来年だね!」…「そうだね」と会話は続く中、エレベーター迄一緒に来た溝口は、「あたしも帰ろっと」と同じエレベーターで下へと降りる。
会社の外へ出る迄溝口は何かをずっと話していたが、私は帰りたくて仕方がなかった。
「笑顔」は時に作る事に疲労感を覚える。
私は話半分で溝口の話を聞いていた。思う存分話せたのだろう溝口は「じゃあ、上河!また来年!お疲れね!」と言って私に背を向けて帰って行く後ろ姿に私は「本当に可愛らしい恰好」と呟いていた。
「さ、私も帰ろう」と切り替え、溝口に背を向け帰路へと着く。
十二月のこの時間はすっかりと暗くなっていた。
寒い中、空気は澄んでいる様で淀んでいる様な街。
ガヤガヤとしている喫煙所を横目に、早く帰ろうそんな事だけを考えていた。
今日は何を作ってくれたんだろう?と楽しみになっていた彼の作る食事にワクワクしていた。
帰路へと着く間に私は何度も夜空を見上げ月を見る様になっていた。
今日はとても美しい半月が見えていた。
私はバッグから最近持ち歩く様になったカメラを取り出し、月の写真を撮っていた。
マンション近く迄私は帰宅しつつある中、また夜空を見上げこの辺では見れないんだなと少し寂しくも感じていた。
気持ちを切り替え写真も撮れたし、まぁ良いかなんて思う事で私は彼に今日の月の写真でも見て貰おうと思い、マンションのエレベーターへと向かった。
部屋へと着く頃、ドアの前で煙草を吸いながら夜空を見上げている彼がいた。
「リム君、ただいま、どうしたの?」…「すずさん!おかえりなさい!」…「えっと月を探してました」と言う彼に私はさっき撮った写真を見せた。
「今日は半月だったよ」…「うわぁ、綺麗ですね!」…「満足しました!」と笑った。
「寒くなりましたね」…「そうだね」と穏やかな会話をし、「部屋に入ろう」と彼の手を握って部屋へと入った。部屋へと入ると彼は私を後ろから抱き締めて「おかえりなさい…すずさん」とホッとした様に感じ取れた。「ただいま、リム君」と彼の表情が見たかった私は後ろを振り返った。
彼はにこやかに「うん」と私に返し優しくキスをしてくれた。
「今日の夕食は何?」と聞き返すと「今日はですね、パスタを作ろうと思って…すずさんの帰りを待ってました!」とにこやかに笑う彼の顔に触れたくなった私は、そっと彼の頬を触り「ありがとう」と伝え、私からも彼へとキスをした。
「取り敢えず煙草吸おうか」そう彼へと伝えると、「そうですね!」と元気な声が返って来た。
「先に着替えちゃうね」そう伝え、ベッドルームへと向かい着替えを済ませた私はリビングへと出た。
彼は「煙草吸いましょ!」と私を誘う。彼の言葉に私は安心感を覚え、隣へと座った。
「はぁ…今日は何だか疲れちゃったな…」と愚痴を溢してしまった。
彼は「大丈夫ですか?」と優しく聞いてくれる。
「ごめんね、愚痴っても仕方ない事よ…大丈夫、ありがとう」とにこやかに答えると彼は、
私を真っ直ぐ見つめ、「すずさんは愚痴っても良いんですよ」と真剣な顔を見せてくれた。
「いつも笑顔でいられるすずさんは凄いけど、すずさんだって人間なんです」そう話し続けてくれた。
「無理して笑わないで下さいね」…「ありがとう、リム君」そう伝え私は彼を抱き締めた。
素直に正直に彼の前では居よう、そう思えた瞬間だった。
「…正直、病気がある事で負い目を感じて、毎日頑張って一年の終わりは毎年疲れがどっと出ちゃうんだよね」そう彼へと伝える。
彼は私の頭を撫でながら、「すずさんは凄いし、偉いです」と私を甘やかしてくれる言葉を紡ぐ。…「ありがとう…」何だか一気に身体の力が抜けてしまった私は彼へと寄り掛かりながら、
煙草に火を点け、「リム君?…明日の朝パスタ作ってくれない?」と食欲がない事を伝え、彼に膝枕を強請った。「分かりました!お疲れ様なんですね、俺の膝で寝ちゃっても大丈夫ですよ」と快く受け入れてくれた。彼の膝枕の中で天井を見上げながら煙草を吸う。
「リム君も吸って良いからね」と今日は笑顔になれそうもない私を悟ったであろう彼は「はい…ありがとうございます」と煙草へと右手を伸ばしていた。
左手は当たり前かの様に私の頭を撫で続けてくれていた。
ぼんやりと彼の顔を眺めながら、私は「リム君、明日の夜一緒に外にご飯でも食べに行こうか」と一つの提案を投げ掛けていた。
「たまには、良いですね」と答えた彼に「外は怖くない?」と尋ねると、「すずさんも一緒だし、一応薬も持って行きますね」と返って来た返事に安心した私は煙草を消し、静かな空間が二人を包んだ。
いつの間にか寝てしまっていた私が起きたのは二十三時を廻っている頃だった。
ベッドへと移動して眠りに付いていた私は向き合って寝ているリム君へと「ありがとね」と声を掛け、ぐっすりと眠って居る彼の頭を撫でた。柔らかい髪、いつまでも触って居たいような感触に、心が穏やかになる。目の辺りまで伸びていた髪をサラッと持ち上げ、手櫛で彼の髪に何度も何度も指を通していた。
あぁ、もう遅い時間だ、と思った頃私は薬を飲みに立ち上がった。
彼を起こさない様に静かにベッドルームから出て、キッチンへと向かう。
優しい光の間接照明を点け、私は薬を飲み煙草吸って寝よう、と煙草に火を点ける。
煙草を吸い終えた私は、メイクルームへと向かい、いつもの香水を纏い深く息を吸い込んだ。
疲れを癒すかのような呼吸をし、香水の香りに包まれた私はベッドルームへと戻る。
ゆっくりとベッドへと戻り、彼と向き合う様に横になり彼の背中へと手を回す。
「明日は楽しもうね」小さく呟くと、彼は「…ん、すずさんの香り…」と私を覆う様に抱き締めてくれた。起きていない筈の彼は自然と私を抱き締めてくれる。
眠ったままの彼を私も抱き締め、二人で眠りへと落ちて行った。

  • .:*みん.:*

    .:*みん.:*

    2024/04/21 14:16:39

    笑顔にしろ何にしろ 自然なままではなく 作「らなくてはならない」状態って疲れますよね

    リム君とは 自然なままでいられる
    リム君も自然なままでいられる

    そんな二人が長く続きますように

    ゆっくり眠って 疲れもとれますように

    冬の夜は 祈りに相応しい すてきな時間のような気がします(*´꒳`*)