どんぐりやボタンとか

ケニー

おれはよく浜辺や森の中、あるいは道端などで、落ちてるものを拾う。例えば、どんぐり、ボタン、貝殻、石、ちびた鉛筆、鳥の羽根、何かの部品、錆びた釘、などなど、ちょっと自分のセンサーに引っかかるものなら何でも。そして、それをコレクトして、部屋の棚の中にしまってある。

そんなふうに集まった自分の棚の中にある記憶や思い出、もしくは、新しい体験や、これからしたいことなんかをみなさんにシェアするブログです。

夢 (10)

自作小説

涙の海はもう巨木を飲み込んでしまっていた。
海には無数のクラゲたちが泳いでいた。
白く透き通る小さくて触手の長いクラゲで、遠くに竜宮の使いも一匹泳いでいる。

この涙の海は、おれの中で何かが爆ぜた結果なのだ。と思った。

思いついて、おれは海の中で巨木を登ってみることにした。
しばらく登っていたけど、泳いでしまった方が早いことに気がついて、途中で木から体を離して、上へ向かって泳ぎだした。
海面へ近づいていくにつれて、おれはいつの間にか少年から51歳のおれに戻っていった。
海面へ顔を出すと、巨木のてっぺん、先っぽのほんのちょっとだけが海面から出ていた。
空は厚く黒い雲で覆われて、風が荒ぶっている。
今にも嵐になりそうな不穏な空気だ。
遠くに雷がなっているのも見えて、海流がぐんぐんを勢いを増していくのがわかった。
おれは海流に流されてしまわないように巨木のてっぺんにしがみついた。
雷はもうおれの頭の上で鳴っていて、ポツポツと顔に冷たい雨が当たっている。
海面の波はどんどん高くなり、雨は激しくなってくる。
おれは水中に入ってしまった方が良いと思って、潜った。
海の中はもうクラゲも何もいなくて、海流が泡を立てて、ごうごうと流れていってる。
おれは必死で流されないように巨木にしがみつきながら、下へ降りてゆく。
巨木の葉はどんどんちぎれて飛んでいき、あっという間に流されて、みるみるうちに無くなっていく。
ようやく熊の巣穴までたどり着き、おれは穴ぐらの中に入った。
穴ぐらの中は不思議に静まっていて、穏やかだった。
穴ぐらから外を見ると、海流は青黒く渦巻いてこの世を破壊しようとしているようだった。
穴ぐらの中は外の影響を全く受けずに暖かいままだ。
ごうごうと怒り狂う海鳴りの音は一枚の厚い強化ガラスの向こうで聞こえるように隔たっていた。

おれは恐ろしくなってうずくまって頭を抱えた。まるで無力な幼児のように怯えていた。

やがておれはそのまま熊の巣穴の中で眠ってしまっていたようで、目がさめるとホテルのベッドの上だった。