正白SS
小さな少女を見て
入江正一は呟く
「・・・こんなの。間違っている」
「間違ってないよ正チャン」
少女を優しく愛でる様にその言葉が紡がれていく
「こうするのが、一番良いんだ。これは僕が色んな世界で彼女を見てきたから解る。彼女は最後に消滅を望んでいる事も。でも僕がその意思から彼女を守っているんだよ」
そうそういう考えで彼女から意識を奪った事も僕は知っている
「こんな世界、彼女が護るに相応しくない。そう思わない?」
・・・でもきっと貴方は後悔する筈だろう。
きっと新しく世界をはじめても人は変わらない。
貴方が手を汚すだけできっと何も変わりはしないだろう。
「貴方が貴方自身を傷付ける結果になるのなら、僕はきっと誰よりも早く貴方を守る。」
「それって僕の意思とは関係無くって事かなぁ?」
「それが僕の出来る事なら」
「それじゃあユニチャンを拘束している僕と何も変わらないよね」
そういって奇麗に口の端を歪ませ貴方は笑う。
試されているのだろうか?僕は
「僕は貴方の配下ですから、貴方の意の侭に動くだけですよ」
腹の中が鈍く動きを変え、僕に痛みを訴える。
「有難う。正チャンならそう言ってくれると思っていたよ」
「それじゃあ僕は仕事があるんで」
「期待しているよ」
・・・バタン
と扉を後にし、誰も居ない事を確認しその場にうずくまる。
「もう嫌だ」
嘘を付く事も
嘘を付き通す事も
嘘を隠す事も
「もう限界だ」
涙がこぼれ落ちる
あの人をこういう手段でしか救えない無力な自分を嘆く
もっとあの人と色んな話がしたかった
あの人の力、運命それは巨大過ぎて
そしてあの人の意思もそれに応じて形を変えたものだと今更気付く
「止められない」
止められなきゃ変えるしかない
その起動を
「・・・僕が変えてみせる」
それは呪文の様に
それはスティグマの様に
僕の心に深く焼き付けられていく刻印
僕は貴方から逃げない。
強く心を奮い立たせ未来へと突き進む。
過去を変える未来へと。