夢香

【小説】真夏の罪 その⑩ 陽斗君と香月君

自作小説


裏庭を出た陽斗君は校門のところに来ている香月君と話していた。
私は塀の後ろで、出るに出られず、盗み聞きをする羽目になった。

「香月、おまえ、本気で美桜のこと好きなのか!?」
「陽斗。」
香月君は真剣な表情で答えた。
「おまえには悪いが、本気だ!」
陽斗君は香月君にくぎを刺す。
「他の女友達と遊ばないか!?告白されたからって、ホイホイ付き合ったりしないか!?」
「あたりまえだ!」
「信じていいんだな?」
陽斗君は念を押していた。
「もちろんだ!今までの俺とは違う。」
「わかった。おまえを信じるよ。」
「もうすぐ、美桜がここを通るはずだ。美桜のことを頼む。」
陽斗君は香月君の肩をつかんで言った。
「えっ?」
「今さっき、美桜とは別れてきた」
そう言って、陽斗君は帰って行った。

私は塀の後ろで、陽斗君の優しさに涙していた。

「岩崎。出て来いよ。そこに居るんだろ。」
香月君は私を呼んだ。

私はバツ悪そうに出て行った。

「陽斗と別れたのか?」
私は黙ってうなづいた。
「俺のせいだよな...。」
私は首を横に振って、
「私のせい...陽斗君のこと、ちゃんと好きでいられなかった私が悪いの。」
香月君はつらそうに言った。
「陽斗は、中学からのダチなのに、ひどいことをしてしまった...」
香月君は場所を考えないで大事な話をするの変わってないな。
また、校門で大事な話し出すし。
「それなのに、陽斗は、岩崎の事、頼むって言ってくれた。」
「陽斗の優しさに甘えていいんだろうか?」
私は言葉がでなかった。
「岩崎は、俺のことを許してくれるか?」
「許すも許さないも、罪は私の方が大きい...」
「俺たちが幸せになるのが、陽斗への罪ほろぼしだと思うのは、都合がよすぎるんだろうか...」
香月君と付き合うことが、罪ほろぼし?
私はそんなふうには、考えられなかった。
「私...今は、香月君のこと好きだとか、付き合いたいとか考えられない...」
「ごめんなさい。」