チベットにて6
5時45分起床。
同室が1時近くまでうるさかったので、非常に眠い。
6時発のミニバスに乗り、デプン寺に行く。
混んでいるので通路に座って。
15分で到着し、人の流れに乗って10分ほど山を登ったところで、ピストン輸送のトラックが荷台に人を乗せてガタゴト寺の入り口まで登ってくれた。
今度は坂を上って山肌のほうに出る。
まだ暗い。
足元がおぼつかないほどだったのだが、待つうちに空が白み始めてくる。
みんな弁当を広げているので、私も朝食。
8時ごろ(北京時間なのでまだ日は出ていない)、楽器の音と共に大勢の僧がやってきた。
ここら辺がコンサートなんだろうか。
うーん、確かに仏教音楽のコンサートともいえないことはないけど? と解せない気持ちで前を見ると、坊さん方の行く先の大きな崖には何かの仕掛けがしてある。
日の出と共に大きな布が張られていくのだが、どの位大きいかというと崖の上に50人以上の坊さんが並んで何本もの紐で引っ張り上げ、下にも同じくらいの坊さんがたぐまったところを直したり、紐がおかしくならないか用心しながら広げていく大きさ。
といっても最初はただの黄色い布。
あれ、香木を焚く煙がすごくて見えないだけなのかな、などと思っていたが、これは掛け布。
それを取り去ると、巨大なタンカの出現だ。
描かれた真ん中の仏は、半眼の美しい人だった。
とうとうと楽器の音が流れる中、日が昇るにつれて色彩がはっきりするタンカ。
香木の煙で目とのどが痛いけれど、近くに寄ってみるとまたすごい迫力だ。
集まった信者たちはカタを投げ入れたり数珠を繰ったりしながら喜びを表している。
タンカは1時間ほどで巻き戻してしまう。
今度は下から巻き上げるので力が要る。
坊さんだけでは大変なのか、普通の人も手伝っていたので、私も混じる。
布はすごく分厚かった。
その布に触れた後、自然に手が額に行く(額づく代わりの動作)。
日本では「祈る」というのは何かを願うことだけれど、私はこちらでは何も願っていない。
額づくとき、幸せを感じるだけだ。
私は満たされている、というこの感覚を味わうために、人は巡礼をするのではないか。
ホテルの掲示板には「DEPUN MORNING CONCERT BIG TANKA!」としか書いてなかったので内容の想像がつかなかったのだが、来てよかった。
せっかく来たのだ、巡礼の道を歩くだけではもったいないので、その後寺めぐりをする。
祭りのためか普段見られないような小部屋までたくさん開いている。
歴代ラマの像はただのおっさんにしか見えないが、仏像の半目のお姿は大変に美しい。
チベット人は漢人が嫌いなためか大変に日本人びいきで、「日本人」というと急に細かい説明をしてくれたりする。
途中、めがねを置き忘れてしまったのだが、戻るとぼろぼろの僧衣を着た乞食坊主のような人が預かっていてくれた。
私を見ると「これでしょう」というように差し出してくれる。
昨日盗難にあっただけに、嬉しい。
お布施を弾ませてもらう。
途中でS田君に会い、一緒に見て回ったが、すごくボリュームがあって1時までかかった。
僧坊の下のほうの地面に溝が掘ってあるが、途中で途切れている。
これは何だ? と思っていた疑問はすぐに解けた。
若い坊さんがバケツを下げて出てくると、どこからともなく何匹もの犬が来て尻尾を振る。
バケツの中は残飯だ。
坊さんは残飯を溝に流す。
静かに群がる犬たちは、緩やかに尾を振りながらそれを食べる。
ここの犬の毛艶がいいのはこのためなのか。
ミニバスで帰り、昼食。
それから自転車を借りてホリデーインホテルに電話を掛けに行った。
片道30分もかかる遠い道のりだ。
ラサから国際電話を掛けるには、郵便局かここからしかないのだ(当時)。
すぐにつながったのはいいが、高いな。
5分で約100元だから2000円だ。
郵便局は並ぶし待つぞと言われたけれど、安いらしいから今度はそっちを試してみよう。
帰りにヤクホテルに寄ったら、K君は高山病がひどくて点滴を受けたそうだ。
彼は3日後のネパール行きランドクルーザーに乗るという。
大丈夫だろうか。
夜半、夜食を取りたくなって隣のチベットレストランに。
ツァンパに初挑戦。
お椀にバターの塊を入れ、湯を注ぎ、砂糖を入れる。
その上に麦焦がし粉をたっぷり入れ、端から指でこねていく。
かなりの固こね。
のどが渇くけど、なんか懐かしい味がする。
これは貧しいチベット人の食べるもので、ラサの人間は食べない、と店の人たちは言いながら、物好きなリーベンだという顔で見ていたけれど、完食したら「外国人がこれを全部食べたのは、お前が初めてだ」と喜んでくれた。
正直途中でおなかがいっぱいになっていたのだけれど、食べてよかった。
昔はこれを毎日食べていたのだそうだ。
http://tabj.web.fc2.com/shasin/depunji.html
glycogen
2010/07/16 09:56:32
Rinoさん
チベットの独立を認めたらほかの地方も独立を求めるだろうし、経済を中国に骨抜きにされているから・・・など、独立はとても難しいと思います。
ダライ・ラマも今は完全な独立でなく、せめて自治と信仰などの自由を認めて欲しいという風に要求が変わってきているようです。
自分の好きなものを好き、と言えない社会は悲しいですね・・・
イチゴイチエさん
ビッグタンカ、大きいでしょう。私も見てびっくりしました!
お寺の入り口からもずっと長い行列だったんですよ。
写真にとってはいませんが、あのお坊さんの笑顔だけ、今も心に焼き付いています。
ツァンパは日本でも再現できます。麦焦がし粉はなかなか売っていないかもしれないけれど、見かけたら試して、こんな感じなのね、と想像してください^^
当時の中国はまだ犬は食べる対象だったので街中では全然見ませんでしたが、チベットは犬天国でした。
イチゴイチエ
2010/07/16 00:39:15
お写真見ました♪
ビッグタンカ、想像してたよりもずっとでっかいです!!Y((#@ワ@#))Y
人もいっぱい、すごいです(*@0@*)
ボロボロのお坊さん、ほんとに心が美しいと思います
もう戻ってこない、会えないかもしれない外国の観光客の
落し物、じっとひたすら待っている…
彼の人生もなんか想像できちゃうようなエピソードですね・・(*@_@。)・・
ツァンパ、自分でも作ってみようかなあ~☆(*@v@;)できるかな?
あっさいごの犬ちゃんたち、ゴハン食べてる姿が可愛いかったです♪(*^v^*)
Rino
2010/07/15 23:10:53
こんばんは。
壮大で人々の心が豊かな国、チベット。。。
glycogenさんの文章を読ませていただいてるうちに
チベットが大好きになってきちゃいました(*^-^*)♡
画像も見せていただいてるので、余計に親近感が湧くのかもしれませんね~
本当に。。。独立してくれないかな。。。(しつこい)
glycogen
2010/07/15 06:18:57
イチゴイチエさん
すみません、写真を入れ忘れてたので、今アドレス追加しました。
今回2000字ぎりぎり^^;
正直海外で忘れ物をしたらしたほうが悪いに決まっているので、あんな風に待っていてくださる方がいるのに本当にびっくりしました。
お坊さん相手なので礼拝してお布施を渡すのも自然なこととして行え、よかったです。
ツァンパは本当に日本の麦焦がしの味です。
日本でも麦焦がし粉を買って似たものを作れますが、1袋入れても1食分には程遠い量しかできません。
あまーくするとおいしいです^^
イチゴイチエ
2010/07/15 00:48:40
デプン寺の巨大タンカ、香木の煙と大勢の巡礼者、観光客、僧侶とその奏でる仏教音楽
そして登ってく朝日に照らされて。。。タンカが現れる所、ぼくも想像しました。。。(*@_@。)。。。●。。
グリコさんの「思わず祈った」ってお気持ちもわかる気がします。。。(*u_u)人。。●。。
ぼろぼろの僧衣を着た乞食坊主さんも印象に残ります…
ぼろを着てても心は錦ですよね☆
残飯食べる犬たち、電話かけるために自転車30分、高山病のK君、貧しいチベット人が食べてた「ツァンパ」
これぼくはじめて知りました…懐かしいっていうか、なんだろうこの気持ち…(*@_@。)ふしぎに涙でます…
glycogen
2010/07/14 23:56:52
まあくん
何とお答えしようか迷って、返信を3度も削除してしまいました。
私もそういう衝動に駆られることが何度もあったので、わかります。
わかるけど、今は行っちゃえばあ? と軽々しくは言えませんので。
ほかの場所なら気分転換に1週間くらいで! という旅の仕方もできますけれど、チベットにはお勧めできません。
ひどい高山病になります。
せっかく行っても酸素ボンベが手放せなかった、ではなんにもなりません。
観光地だけを駆け巡るツアーでは、今はほとんどチベット人と話せないようですし。
どうかのんびり行ける時までとっておいてください^^
まあくん
2010/07/14 19:48:11
・・・ゆうべ、外が土砂降りの中、昔頂いたチベットの写真を探し出して、ずーっと眺めてました。
何だか、ホントに行きたくなってきた。異常な位に。
家族旅行で・・・。うーむ、反対されそうだなあ。・・・頑張って、一人旅でも・・・・。
悩む所です。
当分は、写真で我慢しますね。はい。