創作小説「TONE」1/6
数年前に書いた小説をUPです。
小説のサークルに7月ころに載せていたんだけど、自分のブログにもということで、持ってきました。
短編なので6話で終わります。
現代のバンドモノ。
「TONE」
第1話
静かな空間にバイオリンの音が響いていた。
母に連れられて来たバイオリンのコンクール。
イトコが出演するということで無理やり連れて来られたものの…眠い。
クラシックの音楽は子守唄代わりと、音楽の授業で学習して以来、自ら好んで聞いた覚えは今までない。
これなら家で好きなバンドの音を聞きながらマンガを読んでいる方がどんなに有意義な時間だろうと思いながらあくびを噛み殺していた。
イトコの姉さんの出番も終わったし、帰ってもいいよねぇと母に目で訴えるものの、遺伝子の繋がりはどこへやら全く伝わらないっていうか、視線すら合わない。
椅子に深く座ってぼーっと知らない演奏曲を聞く。
激しい拍手の音にビクッと気付き、演奏が終わったのを知る。そんな繰り返し。
そして、中央に新しい演奏者が立った。
小柄でかわいい女の子。
いかにもお嬢様風で、演奏者の紹介アナウンスでは音大生とか。
伴奏者がピアノに座る。
こちらは眼鏡をかけた若い男の人だった。
合図を送るため視線を交わす二人。
この二人、出来てるんじゃないの?なんて下世話な想像をしたりして。
始まった演奏は案の定、全く知らない曲だったが…なんだろう、ストンと耳に入ってきた。
心地好い音の響き。
バイオリンのことなんて判らないのに、いいな、と感じた。
演奏の終わりと共に大きな拍手が会場いっぱいに響き渡った。
私も素直に拍手をする。
その中、舞台に歩み寄った人影。
大きな花束を抱えサングラスをかけた長身の男性。
演奏者の女性に舞台下から花束を渡すと、伴奏者である男性も手招きで呼び寄せる。
そして手渡したのは大きめの茶封筒。
なんか怪しいヤツだなぁと思っている間にグラサン男は軽く手を振ってそのまま会場の外へ出て行った。
「えー!? うっそ、マジで?!」
ざわめくロビーで携帯電話を耳に当て、叫んでいた。
一応マナーモードにしていた携帯電話の着信履歴に友達の名前が立て続けに入っていたのだ。
コンクール結果発表の待ち時間。
別に帰っても良かったんだけど、何となく気になったあのバイオリン。
どんな結果になるのかちょっと興味を持っていた。
それで電話をかけた友達からは思いがけない言葉。
『Fly Viewのシークレットライブ、チケット手に入れたよ~~しかも今夜~~』
もう興奮で半泣き状態の友達の声に一気にテンションが上がった。
Fly View…今、一番ハマっているバンドの名前。
ボーカルのマキ、ギターの、ドラムのシンジ、そしてキーボードのユウ。
四人で構成されたありふれたバンドのひとつで、デビューしてまだ1年弱だ。
しかし人気度は現在ウナギ昇りの上昇中。
曲がいいというのは当たり前ながら、もうひとつ理由がある。
彼らはテレビの音楽番組に今まで殆ど出演していないからだ。
周囲の者が彼らに同じ質問を彼に投げかけると、リーダーのマキの応えはひとつ。
『音が違うと気持ち良く歌えないから』
バンドのキーボード担当のユウが、学生のために活動を制限している。彼なしの演奏では歌えない、と。
話題作りだと批判する者も少なくないが、それが話題を呼び、知名度が上がってきているのだ。
公言する彼らが歌うとなると、それはメンバーが揃った時だけ。
「でも、本当に本物なの!?」
思わず確認してしまう。
『はっきりとは判んないけど、それでも行かなきゃ、ね』
もし本物だったら…期待が膨らむ。
「うん、判った。場所と時間は?」
電話からは何度か行ったこともあるライブハウスの名前と開場時間の6時半が告げられる。
あと2時間半。
このまま駆けつけて…とも思ったが、気になるコンクール結果。
あのバイオリンは賞に入るだろうか?
見てからでも充分間に合うだろう。
「用事が終わったらすぐ行くけど…先に並んでいてね」
とお願いしておく。
立ち見で席のない会場だから早く入らないと前にいけない。
電話を切って席へ戻る。
隣に座る母親にコレ終わったら出かけるからと告げて。
【続く】
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「魔王の森 -赤眼の魔法士-」の概要ができるまで、こちらをお楽しみくださいっ
美琴
2010/09/01 12:24:52
これも面白そうですっ♪
毎日の楽しみがまた増えました(^-^)
ありがとぉです♬