一度だけ、上野公園での宴会系花見をしたことがある。
上野の隣の御徒町に支社ができた年、課長が『やろう』と言ったのだ。
当時ペーペーだった私たちは昼間から2時間ずつ交代で場所取りなどした。
それなりに楽しかったが、この時期は寒い。
『こういうのは一度すれば話の種になるね』と言うことで、2度目はなかった。

独身時代の花見は、会社帰り、ふと公園の前を通って桜がほの白く見えたとき。
気まぐれにビールを買い、その1本を飲み終えるまで誰もいないベンチに座り、桜を見た。
桜の花の向こうにはビルの明かりが見える。
もう1本隔てた道路は人通りが多い。
けれど、街中の小さな公園なんて誰も花見などしないらしく、そのなかにぽつんと立った1本の桜は、私だけのものだった。
そのビールを飲み干す間。

子供が小さいころは、いつも行く公園よりもうちょっと奥に行った神社の境内で花見をした。
仲がいいお友達と一緒にマックでハッピーセットを買って。
うちは普段、ハッピーセットは買わなかったので、子供はそのおもちゃで大喜びしていた。
ごはんを食べ終わった子供らが境内で走り回るのを見ながら、セットのコーヒーを飲みつつ益体もない話をする。
お互い仕事が忙しくて、そのお母さんともあまり会わなくなった。

義父母が引っ越してきたので、今年は大き目の公園で花見をしようかと話している。
お義母さんから、花見の弁当の分担をどうするかと電話があった。
そ、そんなに気張るんですか！？
どんな思い出ができるのだろうか。

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