「Somewhere」
ソフィア・コッポラ監督の作品
「Somewhere」を見てきました。
ヴェネチア映画祭の金獅子賞をとった作品なのですが…、
これは、
暴力のない北野武映画、
旅にでないヴィム・ヴェンダーズ映画、
微笑みのない小津安二郎映画、
悪意のないミヒャエル・ハネケ映画
ですね。
淡々と静謐な筆致で、
北野武は暴力を描き、
ヴィム・ヴェンダーズは放浪を描き、
小津安二郎は微笑みを描き、
ミヒャエル・ハネケは陰湿な悪意を描いていたように思うのですが、
じゃあ、ソフィア・コッポラは、その筆致で何を描いているのか?
虚飾の虚ろさ
噂通り、彼女は虚ろさを
淡々と静謐に描いていく作家なのですね。
子どもの存在が、
大人たちの世界の虚ろさを、
反面鏡のように描きだすのですが、
絵も構図もとてもいいのですが、
その点で、この監督は
このテーマを描く筆致を確かに自分のものにしているように思うのです…が、
何かが弱い…、
「はっ」と見ている者に息を飲み込ませるような、
鮮やかさがない。
絵としても、話としても、山場がないんです。
前回のヴェネチア映画祭は、
クエンティン・タランティーノ監督が審査委員長だったのですが、
「この作品で、彼はよく満足したなあ」と思わせるような、
そういう映画でした。
不作の年だったのかしら?