glycogen

富士山に行ってきた3

レジャー/旅行

目が覚めたのは9時半。

頭痛と吐き気のせいだ。

頭痛はどうにもならなくても、吐き気はなぜだかわかっている。

胃が動かず、中に残り続けているのだ。

ぬるくなったスポーツドリンクと共にトイレに行き、吐く。

ドリンクの匂いと味が気持ち悪くて結構すぐに吐けた。

案の定、内容物はまったく消化の気配がなかった。

腹が冷えて固くなっている。

胃が軽くなる程度吐き、後は寝袋の中で胃に手を当て、丸くなっていた。

頭痛だって、温まれば少しは良くなるはず。

そう心の中で唱え続けて。

深呼吸を心がけて。

 

ふーっ、ふーっ、と息を吐き続けているうち、うとうとできた。

長男がエアーを使う音がする。

彼は今回も行けないのだろうか。

それとも根性を見せるだろうか。

 

12時半、起床。

長男の具合が何とかなりそうでほっとしたが、残念ながら三男の方はだめだった。

しばらく具合を見るが、頭痛がするのだという。

吐き気もするという。

私と同じ状態なのかもしれないから、と吐かせようとしたが、トイレに行こうとしない。

ビニール袋に少々吐いてもうだめだと言うので、無理強いはやめた。

ここまで、良く頑張ったよ。

3年でここまで来られたら、十分だ。

 

やはりリタイアの夫婦に三男を頼んで、130分、3人で出発。

これが…進めないのだ。

標高差はたった300m。

だが、道のりは急で、高度は高い。

もとより長男には荷物も持たせなかったのだが、ほんの5メートル、10メートルごとに休んでいれば、はかがいかない。

85尺の御来光館に行くのに50分もかかるとは。

彼自身も思っていたよりずっとつらい行程に驚いているのだろうが、去年それなりにサクサク行った身には驚きも強い。

このままでは日の出に間に合わない。

いや間に合わなくてもいいが、リタイアは嫌だ。

長男が一人で帰れるとは思えないし、だからと言って次男迄リタイアさせるのはかわいそうすぎる。

彼は頑張っているのだから。

しかも人は多く、とてもじゃないけど同じ道を逆行するのは大変そうだ。

 

気弱になった長男にやさしく接しちゃだめだ。

「もうナルトかドラゴンボールの世界に来ちゃったと思うしかないよ。ゴールまで行くしかないんだよ」

強めに言って、深呼吸を則す。

歯を食いしばらなければ見えない景色はある。

親の懐にいられる時間は過ぎた。

受験にしてもほかのことにしても、みんな同じ。

根性出すしかない。

 

長男にもそんな気持ちが伝わったのか、その後はリタイアのほのめかしはなかった。

1回止まって」と何度もエアーを使ったが、弱音を吐くことなく又歩き出した。

逆に足が止まりだしたのは次男の方だ。

足が痛くてたまらないのだという。

口に出すからには、彼の限界なのだろう。

彼は限界まで言わない子だ。

けど、あとちょっと。

もう9合目の鳥居を越えたのだ。

この後は、あと少し。

とんでもなく急でほとんど岩を登っているような道だけど、この急坂を上りきれば頂上なのだ。

もうすぐだから。

 

空が明るんできた。

4時を過ぎれば朝焼けが始まる。

「急ぐ人は右側を登って。そうでない人は左側を歩いて。」

という声。

去年は迷わず右側を登ったが、今年はほとんど左側だ。

それにも遅れがちな長男に「深呼吸だよ」と言いながら一歩ずつ登る。