フリージア

金狼の重圧…27

自作小説

 
 「あの3人の精神が崩壊した原因がウルフの呪いだとは思えないが、君の言った通り俺の怒りと言うのはあったかもしれないな」
 ミカミはこれまでのような険しい顔を崩し、素直な顔で話す。
 「だが、俺の怒りがあったとしても彼ら3人の精神を崩壊させることなどできる訳がない。それに俺は彼ら3人とバタフライがこのゲームをしてくれて感謝しているんだ」
 「…感謝?」
 「このゲームの映像をウルフに見せるために、今回のトップ4人との対戦をしかけたのだから。俺はウルフにもう一度EMに乗ってほしいとは思わない、ただ彼の本能に訴えかけ精神崩壊だけでも治そうと思ったんだ…その映像をウルフが見れば、心を刺激して何かが変わるんじゃないかと思っているんだ」
 「それは分かった、その映像を撮りたいと言うのもなんとなく理解できる。しかし、あの仁王たち3人の共通点はこのゲームでウルフと対戦したってことじゃないか…やはりこのゲームに仕掛けがあるんだろ?これに乗ってウルフに負けると…」
 「ウルフに負ける?」
 「そうだ、ウルフに負けると精神が崩壊するシステムを、このゲームに乗せているんじゃないのか!」
 ユウジはウルフと対戦したみんなの顔を思い浮かべていた。負けてしまった瞬間に抜け殻のようになったのではないか、それが頭をよぎる。
 少し斜に構えミカミの答えを待った。
 「…うーん、仁王やフォックス、ライトの仲間たちがどう言ってるのかは知らないが、君は一つ勘違いをしている。バタフライを含め、このゲームでウルフと対戦したみんなは勝っている。もし君が言うようにそんなシステムがこのゲームに組み込まれているとしたらなら、勝っているのにそんな症状が出るのはおかしくないかな?」
 「………勝っていた?」
 「そう、みんなウルフに勝ったんだよ。俺はゲームの中でもウルフが負けるなど思っていなかった。しかし、彼らは勝ったのだから、素直にすごい男たちだと感心していたんだ。彼らみんな、ウルフが苦しんで制御できなくなったトップという立場になったんだ。彼らはやはり耐えられなくなったんだな…そうとしか考えられない。彼らは自ら精神崩壊への道を進んだと言うことなんだろうな」
 完全無欠のウルフが耐えられなかったトップという重圧をそのまま彼らが受け継いだ、あの3人は背負いきれなかったんだ。
 「バタフライは耐えられるのかな?それは俺にも分からない」
 ユウジの目にはバタフライが失速していく様子が浮かんだ。そして動かなくなる姿が見えた。
 「…なんてこった、みんな勝っていただなんて…………ハヤト…」