安寿の仮初めブログ

安寿

これは、ニコットタウンに現れた安寿の仮想ブログです。

『MIWA』を見てきました。

アート/デザイン

野田地図公演

作・演出・出演 野田秀樹

主演 宮沢りえ

共演 瑛太、井上真央、古田新太、青木さやかetc.

『MIWA』を見てきました。

 

野田秀樹の作品は数多く見ている気がしますし、

宮沢りえ主演の芝居も、これが今年二本目です。

 

…ですが、これは名作、名演!

私の中での、野田秀樹作品ナンバー1ですし、

宮沢りえ主演の芝居のベスト1です。

 

10月からなんと2ヶ月間のロングラン公演だったわけですが、

その公演も今週いっぱいでおしまい。

なので、芝居が練れて、熟成して、仕上がりつつあるのでしょう。

完成度も、劇場内の緊張度も、おそろしく高い。

最後の、宮沢りえの静かな長台詞の間、

客席は静まりかえって、一言も聞き漏らすまいという感じ。

 

思うに、野田秀樹の芝居の特徴は、

言葉遊びが連想の飛躍を生み、

連想の飛躍が観客をわけのわからぬ世界へと連れ込み、引きずり回し、

何が何だかわからなかったけど、ともかく面白かった~…

そんな芝居が多かったように思うのです。

 

でも、今回の芝居は、美輪明宏という重しがありますから、

どんなに話やイメージを飛躍させても、

それが美輪という人物の心の風景を

万華鏡の如き図柄として描き出すかのような効果を生みます。

野田の描く、慌ただしく混乱し続ける各場面は、

美輪という人の波乱の一生のデフォルメとなって、

美輪の人生のドラマを構成していくのです。

 

そして、この芝居全体が美輪の人生のパロディと言えるのですが、

道化の言葉が、時々この世の真実の姿をあっさりと言い当てるように、

このパロディも、時々パロディとしての役割を投げ捨てて、

美輪の真実を描き出してしまう瞬間があります。

 

例えば、それは長崎への原爆投下であり、

(美輪が長崎出身であったことを初めて知りました)

赤木圭一郎の事故死であり、

三島由紀夫の割腹自殺であるのでした。

 

舞台の上で描かれた、その時の美輪の受けた衝撃は、

もはや美輪の人生のパロディはなく、

美輪の人生の悲しみや痛みそのものなのでした。

 

この芝居は、ある意味、美輪の存在があって成立しています。

こんな事を言っては失礼ですが、

美輪が亡くなり、彼(彼女?)の記憶が人々の中から消え去った時、

この芝居を再演しても、おそらく意味はないでしょう。

私たちは皆、美輪の存在を知っているからこそ、

この舞台のパロディを楽しむことが出来、

しかも、この舞台が、

不意打ちのように描き出す、美しくも悲しい光景に、

私たちは、美輪の真実を見るのだと思います。

 

美輪…、

いいえ、MIWAは、

芝居の最後、

鏡に向かいながら、

(鏡の向こうに座る観客に向かいながら)

自分の人生を振り返って呟きます。

 

  忘れてしまったわ。

  愛は消えないけど、

  愛した記憶は消えてしまう…

 

いいえ、あなたの中に、

愛した記憶は残っているはず…。

でも、消えたことにしておいた方がいいことも

この世の中には確かにあるのでしょう。

 

おしまい。

  • 安寿

    安寿

    2013/12/01 02:12:39

    >千鶴@ゆきさん

    お返事、遅くなってすみません。

    いつかなんて言わず、すぐに見ましょう。
    確か今、大阪公演だと思います。
    (名古屋公演がなくて残念)

    おそらくこの芝居はテレビ放送されると思います。
    とはいえ、芝居はやはり、時空を共にしてこそ。
    機会があれば、是非体験して下さい。

    あ、天草四郎ネタも、入ってました(笑)。


  • 千鶴@ゆき

    千鶴@ゆき

    2013/11/26 17:06:49

    野田さんのお芝居。いつか観てみたいです^^
    観劇日記読めて、うれしかったです♪ 

    美輪さんといえば前、天草四郎の生まれ変わりとか自身でおっしゃってた気がします。
    真相は・・うーん。(でも、ほんとうにそうおっしゃると思えてしまうのが不思議・・。)