『ミンヨン 倍音の法則』を見てきました。
このわずかな休みの間に、
私がしなければいけなかったこと。
それは、おそらく命日に訪れることができない母のお墓参りをすること。
そして、『ミンヨン 倍音の法則』を見ることでした。
↓ 公式HP:予告編あり
http://www.sasaki-shoichiro.com/
監督である佐々木昭一郎さんは、
1980年代、NHKを代表する演出家であり、
『四季 ユートピアノ』等の作品で、
数多くの国際賞を受賞された方でした。
その佐々木昭一郎さんが、
20年の空白を経て作りあげた作品がこの『ミンヨン 倍音の法則』です。
そして、佐々木昭一郎さんは、
以前と変わらぬ演出スタイルを貫き通して、
物語とは言えないような、
断片によって紡がれていくかのような、
でも、しっかりと一つのモチーフが、
ミンヨンという一人の女性の
歩んでいく姿を通して描かれていくのでありました。
彼の作品において、プロの役者さんは登場しません。
ですが、一般人を題材としたドキュメンタリーでもありません。
佐々木昭一郎さんは、
自分の思い描く物語のモチーフを担って、
しかも、自然にその世界を広げていける人を見つけ出すことができる点で、
いわゆる天才なのでしょう。
一切、演技をつけることをせず、
ただ、ミンヨンに自らのモチーフを託して、
彼女が多くの人々の間に介在し、
触媒となって人々に不思議な作用を及ぼしていく姿を
音楽と共に映像に収め、編集していくのです。
フィクションなのですが、
しかし、物語としてしっかり構成された展開はなく、
かと言って、ドキュメンタリーとして生活を記録しているのでもない。
しいていえば佐々木昭一郎は、
ミンヨンを軸として描かれる数々の夢を映像にとどめているのです。
こういう作品をつくり出す人が、この世にはいるのですね。
11月3日から7日まで、
この映画の公開に併せて、
NHK・BSプレミアムのプレミアム・アーカイブスで、
NHKで制作した彼の主要作品が再放送されるようですので、
関心のある方はどうぞ、ご試聴のほどを。
このような映像詩よりも、
もう少し取っつきやすい作品として、
佐々木昭一郎自身は気に入っていないようですが、
私は気に入っている、
つげ義春原作・佐々木昭一郎演出のNHKドラマ『紅い花』もあります。
↓
http://www.youtube.com/watch?v=EsnbBLTUHGU
NHKアーカイブスでも見ることができます(有料)。
つげ義春の不条理漫画そのままの、
幻想を見ているかのようなドラマなのですが、
大人へと変化していく少女のなまめかしさ、
時代に翻弄されていく少女の儚さ、
そして、最後に少年少女たちを
森へ帰してあげようとする作者の優しいまなざしは、
安寿がいつか帰るべき場所でもあるように思うのです。
是非ともご覧あれ。