『海辺のカフカ』を見てきました。
さいたま芸術劇場まで行って、
村上春樹原作、フランク・ギャラティ脚本、
蜷川幸雄演出の『海辺のカフカ』を見てきました。
プラスチックの箱の中に閉じ込められた人々と風景。
その箱が舞台の上を交錯しながら入れ替わっていく。
そうすることで、
二つの物語が同時並行し、
東京から高松へ、そして森の中へ、
また、野外から室内へ、室内から野外へと、
移動しながら進んでいくこの物語の場面転換がはかられていくのでした。
このアイデアは、演出の蜷川幸雄のものなのか、
それとも脚本のフランク・ギャラティのものかは定かではありませんが、
ケースの中に閉じ込められた箱庭の上で、
フィギュアたちが奇妙な物語を織り成し、
その物語を、外から私たちがそっと眺めている…
そんな静謐な劇場空間を醸し出していました。
誰のせいでもない、
何かよくわからない暴力によって壊れ、
切り離されてしまった人たちが、
失われた半身を求め、
半身に自らの生を託して消えていく。
そんな物語の骨格を
脚本のフランク・ギャラティは過不足なく掬い取っていたように思います。
もう一度カフカくんの旅を、
ケースの外からひっそりと見届けてみるために、
原作を読み直してみたい誘惑に
安寿は今、駆られています。